目の前の電車に飛び乗ったら車両が激増した話

 

これは、一人のオタクの懺悔、いうならば反省文である。


軽く自己紹介させてもらうと、私は

社会は敵だらけでも素敵なことがあると信じていれば必ず僕らに会えるから

(Shake body / 超特急)

の歌詞を胸に、平日はアホほど残業をしまくり、弊社から巻き上げた残業代やボーナス等のお賃金をそのまま(株)スターダストプロモーションへと受け渡す仲介業務を担っている社会人オタクだ。
もはや私を媒介するのが無駄なので、弊社は私の給料を直でスタダの口座に振り込んでくれた方が早いのでは?と最近は思い始めている。

 

以前書いたブログ☞(目の前の電車に飛び乗ったら佐賀まで来ていた話 - 忘れじの光を胸に焼き付けて)で超特急に出会ったきっかけや、初乗車に至ったなりゆきは卒論並みの脅威の文字数で語り散らかしたが、現在もめ〜〜〜〜〜〜〜〜ちゃくちゃ元気に8号車をやっている。


時の流れというものは、実に恐ろしい。超特急の存在を知ったわずか2か月後にハマりたての勢いに任せて激長ブログを書き散らしたあの日から、コロナ禍を挟みつつ、約4年が経過しようとしている。
近況としては、彼らへの感情は全く衰えることを知らず、むしろ加速度的に胸の中の「大好き」が膨らみ続けており、このままでは身体が破裂しそうな勢いだ。念のため遺言をしたためておくと、もし私が破裂して死んだ場合、骨は粉末状にして恵比寿の街に散布してほしい。


私は割と本気で「この世界には超特急を好きな人間か、超特急を知らない人間しかいない」と信じている。そのため、オタクとしてのスタンスは、まだ超特急に気付いていない全人類〜〜!!!おいでおいでおいでおいでパンダ!!!というもので、とにかくすべての生命体に可及的速やかに超特急の魅力を認知してほしい。そして、一緒に連結して共に夢の東京ドームへ爆走する同士となってほしい。


基本的には全身全霊で「超特急のオタクって死ぬほど楽しい!!!」とTwitterで叫び散らかしてるし、なんか向こうでやたら陽気にお神輿担いでワッショイしてる奴いるな、楽しそうだしちょっくら覗いてみるか〜と思ってもらえたらなと思っている。
「超特急?ってなんか気になるかもw」などと一般人が出来心でツイートしたが最後、パブサで見つけ出してFF外から失礼し、あらゆる手を尽くしてこちら側に引き摺り込む覚悟である。冷静に文字にして読み返すと普通にめっちゃ怖いね。ごめん。


という感じで、根っからの浮かれポンチオタクなので、私は大体の事象はポジティブに捉えられる人間という自負があった。2022年4月23日までは。

 

この日は超特急にとって記念すべきデビュー10周年の全国ホールツアー「Progress」の初日で、私はその日の朝、おそらく世界一浮かれているオタクだった。
 

額のド真ん中の、仏像でいうところの白毫(びゃくごう)の位置に死ぬほど目立つクソデカニキビが爆誕したにもかかわらず、それを気にも留めないほど最高の気分で、まぁ超特急のライブは肌のターンオーバーを早める効果あるし🎵今日の終演後には治ってるっしょ🎵と鼻歌混じりで大量の赤ペンラと共に家を出た。


開演前には連番と合流して大好物のカレーを食べながら、セトリどんなかな?!?Boosterやるよね!?!衣装はどんな感じだろね!!!と妄想をワクワク語り合った。
いざ公演が始まれば、超特急によく似た5人組の謎のうさぎ集団「ぴょん特急」がいきなり会場を占拠し、ピンクのもこもこウサちゃん達がキュートににんじんを握りしめながら「ぼくたちは、ぴょん特急だぴょん♡」と宣言する可愛さに脳が全て溶けたりと、めくるめく熱狂の時間を過ごした。


だから、MCでリーダーのリョウガさんが「超特急から、大事なお知らせがございます」と口火を切った時、今までの夢のような時間に幕を下ろすような、おふざけじゃないと突きつけるような声音に、頭から冷水を浴びせられたような気持ちになった。


張り詰めた表情で客席にまっすぐ視線を向ける5人を見た時、私の脳内に脊髄反射的に浮かんだのが「解散」の2文字だったからだ。それほどに、張り詰めた空気だった。


結論から言うと、超特急が発表したのは解散ではなかった。デビュー10年目にして、夢の東京ドームにもっと近づくために行うという、新メンバー募集オーディション「超特急募」の開催決定だった。


端的に言って、私は、絶望した。


声出し禁止の公演だったけど、会場は大絶叫に包まれたし、目の前の女の子が崩れ落ちるように椅子に座り込んだのが見えた。啜り泣くような声もあちこちから聞こえた。目の前の景色から色が消えた。


解散でなかったことに安堵する気持ちはもちろんあれど、ショックすぎて、声も涙も出なくて、ああ、私は超特急のファンをやめることになるのだな、と他に何も考えられない痺れた頭で、半ば他人事のように思った。


正直、その後のライブのことは全く記憶にない。気づけばオタクたちと居酒屋にいた。
当たり前だけど、超特急募の話でもちきりで、みんな「いや〜〜………マジか」と繰り返しつつ、やばい!びっくりしすぎて超お腹すいたんだけど!と肉や揚げ物をたくさん頼んでいた。

私はその時、喉と肺いっぱいまで砂が詰まったような息苦しさでうまく呼吸もできなくて、「何食べたい?」と聞かれた時も、何も喉を通る気がせず、黙って首を振った。
「…大丈夫?」と心配そうに気遣ってくれる優しさに心苦しさを感じつつ、本音を言うと水も無理だなと思ったけど、何も頼まないわけにもいかないのでちっこいグラスに入ったロックの梅酒だけ頼んだ。周囲の賑やかな会話をぼーっと聞きながら、黙りこくったままちびちび喉に流し込んでいたら、ある瞬間からプツッと堰を切ったように涙が止まらなくなった。


成人してから、人前で、嗚咽が止まらなくなるまで激しく泣きじゃくったことは、後にも先にもこの時しかない。涙ポロリ…とかではなく、大の大人が、マジでガチの大号泣をカマした。「千と千尋の神隠し」でハクからおにぎりを差し出されたときの千尋の5倍くらい激しく泣いた。ヤバすぎ。あの時のオタクたち、迷惑かけて本当にごめんね。


私がこんなにも「超特急募」に激しい拒否感を示していたのは、理由がある。


まず、女子ドルのようにいわゆる「◯期生」という形で卒業や加入を繰り返す形態のアイドルグループを好きになったことが一度もなく、自分の中に「新メンバーが加わる」という概念を受け入れる土台が存在しなかったことも、おそらく前提としてある。


しかし、明確な理由は、かつて大好きだったグループが、結成してから長い年月を積み上げたタイミングで、なんの前触れもなく新メンバーを複数人加えたことがあまりに辛すぎて、そのグループを降りた経験があるからだ。
別に大好きな人が脱退するわけでもないし、新メンバーが加わるだけで現メンバーは1人も減らないと頭ではわかっていたのに、「今のメンバーだけでは力不足で夢を叶えられない」と残酷な現実を突きつけられたようで、本当に身体がちぎれるくらい悔しかった。


あなたたちはこんなにも最高で、最強なのに。私は今のメンバーが心の底から大好きで、必ずこのまま夢を叶えられると信じていたのに。なんでオリジナルメンバーだけではダメだと思ったんだろう。もっとファンが多ければ、こんな選択を彼らはせずに済んだのかな。新メンバーが入ったら今みたいな唯一無二のあたたかい雰囲気はもうなくなっちゃうのかな。てか新しく入る代わりに誰かが抜けてしまったりするんじゃないか……と当時は感情がぐっっちゃぐちゃで、本人たちも事務所も何もかもが信じられなくなり、心がバラバラに砕けて、絶望から立ち直れぬまま逃げるように離れてしまった。


居酒屋で同じテーブルを囲んでいたのが、ずっと前から超特急が好きなハチコで、私より長く超特急のことを見てきて、思うところもいっぱいあるはずにも関わらず、特に動じることなく「超特急募」を受け止めているように見えたことも、気持ちの落ち込みに拍車をかけた。
私はユースケくんが活動休止を発表した翌月の2019年7月に超特急を知って、5人体制のライブしか乗車したことないド新規なのに、こんなにもショックを受けてるのって一体なんなんだ…?とも本気で思った。


想像以上の己の弱さに打ちのめされつつ、過去の経験がトラウマすぎた私は、「超特急をこのままずっと好きでいたい、降りたくない」「5人じゃなくなるなんて絶対に嫌だ」と人目も憚らずに泣いた。そろそろ泣きやめよ自分、と思っても勝手に嗚咽が喉を突き上げてくるし、涙も止まらないしで、なんだか本当に情けなかった。トイザらスの床上で、身を投げ出して暴れる子どもといい勝負できるレベルの駄々こねだった。もし全日本駄々こね選手権があったら、関東代表くらいまでは食い込めたと思う。


そんなグラス握りしめ号泣妖怪と化していた私に先輩ハチコたちが口々にかけてくれた言葉を、私は生涯忘れないと思う。


「つなちゃんからしたら、初めて出会った時には今の体制だったから、もう"超特急"っていう概念が5人なわけじゃん。そりゃあそれが崩れる初の体制変更は衝撃も大きいし死ぬほど辛いでしょ、気が済むまで泣きな〜!」


「私は7人から6人になるのも5人になるのも経験してるから、正直減るんじゃなくて増えるなら、究極推しがいればもう何人グループになってもいいかな〜って感じなんだよね。でも1回目の時はマッッジで死ぬほど辛かったよ!!!わかる!!!」


「でも一個だけ確実に言えるのはね、超特急は大丈夫だよ。絶対に。」


特に、最後の言葉には殴られた。


私は本当〜〜〜〜に辛すぎてマイナスな発想しかできなくて、10年間彼らが誇りを持って積み上げてきた歌やダンス、超特急らしい全力のパフォーマンスに今更ついてこれる実力がある逸材がいるなんて到底思えなかったし、マジで超くだらないこと(ex.膝裏神社)にも全力で盛り上がれるなかよぴ10年選手集団に今から飛び込んできて馴染める人間がいるかよ……と深く深く絶望していた。

でも、体制変更を何度も乗り越えてきた歴戦の8号車たちは、超特急への揺るがぬ信頼を持っていた。なんて強いんだろう、と思った。これが愛だと思った。


その日は結局、涙腺が完全に壊れた激ヤバオタク(私)を励まし続ける先輩ハチコの会という謎の飲み会になり、大号泣して迷惑をかけまくったにも関わらず、「何も食べてない奴が金を出すな!」と脅迫され、最後まで本当に彼女たちはかっこよかった。
「あ〜〜〜マジで横浜流星、超特急に入ってくんないかな〜〜〜」と口々に言いながら元気に解散していく背中を見つめながら、私は地獄の奥底まで沈み込んでいた気持ちから、ぐんと力強く、引き上げられたのを感じた。


そして、超特急が10年間走り続けてきたのは、彼ら自身の意志の強さはもちろんのこと、「超特急なら絶対に大丈夫」と彼らの可能性を心の底から信じ、共に走り続けたいと願うファンが、過去のどんなタイミングにも、彼らのそばにその時その瞬間にいたからなんだな、と痛感した。


超特急はやさしい人たちだから、「古株とか新規なんて関係ないよ、超特急を好きになってくれたみんなが大切だからね」といった趣旨のことをよく言ってくれる。でも私は、絶対にそんなことはない、と新規の立場だからこそ、強く思っている。
だって、昔からフリーライブで足を止めたり、CDを手に取ったり、ライブに足を運んだり、ペンラを握ってきた一人一人がいなかったら、私はきっと超特急に出会えていない。これまでの複数回の体制変更で、かつての私のように、そのグループを信じられずに離れる人が大半だったら、継続して走り続けることなんて絶対できない。だから私は、それぞれの時代に超特急を愛してきた人たちに、何度お礼を言っても言い足りない。


食事も喉を通らないほどに絶望しきっていたのが嘘のように、家に着く頃には私も、今回の超特急の決断に対して、少しでも追い風を送れる存在でありたい、と思っていた。

トラウマは根深かったし、正直オーディションをやること自体は嫌で嫌でしょうがなかったけど、今回ばかりは、目を逸らさず、逃げず、未来を信じてみたいと思った。


Progressの公演のMCや、各所のWEB記事や雑誌など、あらゆる媒体で、なぜその選択をしたかを彼ら自身が真摯に言葉にし続けてくれたことも、私が受け入れられた理由だと思う。
心を砕いて言葉を尽くしてくれた超特急には、感謝の念が堪えない。なかでも、このナタリーさんの記事の言葉たち☞(超特急「クレッシェンド」インタビュー|だんだん強く、広がり続けるために 駆け抜けた10年を抱きしめ示す、超特急の進化の証明 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー)には救われた。


この記事は、最高で最強の4人が連結してくれた今になって読み返してみると、超特急募について彼らが語っていたことが全て願い通りに回収されているようで、奇跡のようだと思った。


新体制の8月8日を迎えるまで、オーディション結果は該当者なしで5人のままだったらいいのにな、と思ってしまうことも、正直何度もあった。
それなのに、吐きそうになりながら迎えた8号車の日の東京ガーデンシアターで、初めての9人の「gr8est journey」のステージが終わった瞬間、胸いっぱいに満ちた感情は、「あ、超特急、絶対ドームに行くな。」という確信だった。


それまでの不安やモヤモヤなんて、2人のピッタリ重なった歌声に、ダンスに、そして何よりも多幸感に満ちた9人のまぶしい表情によって吹き飛ばされていて、私は初乗車の時と同じくらい、心を揺さぶられていた。どこまでも高みを目指す者だけが共有できる熱さに胸が熱くなったし、「未来」が見えた。このグループならどこまでも行ける、と思った。


私は超特急が、たまらなく好きだ。

たとえメンバーが減っても、コロナ禍でライブができなくなっても、どんな困難の時も、顔を上げて前を見て走り続けようとする姿勢が好きだ。腐らず諦めず、天に向かって手を伸ばし続ける貪欲さが好きだ。


私は超特急に出会うまでずっと、ステージに立つ人は、傷を全部コンシーラーで完璧に隠して、神様みたいにまぶしいきらきらの羽と宝石をつけて、天上から手を差し出して「幸せにしてあげるから現実は全部忘れて、さぁおいで」とにっこり笑って、明るく綺麗な夢を見させる仕事だと信じていた。


でも超特急は、いつだって等身大の一人の人間として「現実は辛いし思い通りにいかないことばっかだよ、それでも諦めたくないから、君と一緒に進みたいんだ」とありのままの傷だらけの手を差し出してくる。同じ目線の高さでこちらを何度も振り返りながら、歩幅を合わせて、時にはペースを落としながら、誰1人置いていかずに一緒に並走しようと心を砕いてくれる。

自分たちだけの道を探し、他の誰とも違う、唯一無二の戦い方を貫いている。その歌に、パフォーマンスに、私は何度も何度も人生を鼓舞されてきた。


話は少し変わるが、私には、決して忘れられない言葉がある。

活動休止が続いていたユースケくんの脱退が決定し、5人体制になることが発表された直後のファンクラブツアーの東京公演。2020年の2月、コロナウイルスの脅威が間近に迫る中での、最後の声出しライブだった。


私が入った日の最後の挨拶で、ユーキさんは、目を真っ赤にして、声を震わせて、「超特急はかっこよく魅せるようなグループじゃないかもしれない、これから先に何が起きるか自分でもわからない、でもこれが超特急のリアルなんです、超特急はリアル人生を生きているんです」と叫んだ。

「だから僕たちは、みんなの人生も笑顔にします」

「もう、後悔したくないんだよ!」
涙声で続けた言葉は、もはや絶叫だった。


ここまで泥臭くて、諦めが悪くて、眩しい人たちがいるのかと、ひたすらに衝撃を受けた。たった一度の「人生」を賭けてステージに立っていることを本人の肉声で目の当たりにして、圧倒された。あの日からずっと、この言葉を叫んだ時のユーキさんの眼光の鋭さが、ずっと私の脳裏に焼きついている。汗びっしょりの顔で客席の一人ひとりを見回すように見つめながら宣言した姿に、覚悟を感じた。

 


「リアル人生」を生きる超特急は、新メンバーオーディションを経て、2023年の8月8日に4人のメンバーを加え、9人グループになった。


超特急募が発表されたときは体中の毛穴から水分全部出るくらいの勢いで大号泣カマしてたくせに、私は新体制への拒否反応は、清々しいほどに一切なかった。


むしろ4人のことがびっくりするくらい愛おしくて、どうしてつい数時間前まで存在すら知らなかった人たちのことをこんなにも大切に思えるんだろう??と逆に自分でも驚いた。数ヶ月前の私が見たら自分自身と思えなかったかもしれない。あまりのチョロさに、なんならちょっと引いた。


なんでこんなにも愛おしいんかな、と割と真剣に考えてみたけど、だって「超特急」だから、しか理由がなかった。私が心の底から愛するグループに入りたいと人生をかけて挑んで、そして人生をかけて5人が選び抜いた人たちだから、たまらなく大切だし、大好きだと思えた。

あれから9か月、一人ひとりの内面を知る機会はぐんと増えたけど、知れば知るほど4人とも愛おしすぎてお話にならない。超特急になってくれてありがとう、と全員の耳にタコが5億匹できるくらい、何度でも何度でも伝え続けたい。


ここまであちこちに話が飛びながらもつらつらと書き連ねてきた文章は、あの日、超特急を信じきれなくて大号泣して大迷惑をかけまくってしまった各位への懺悔と反省文だ。


9人になった超特急に、これから先どんな未来が待っているかはもちろん誰にもわからない。作られた物語ではなく、等身大の「リアル人生」を生きる彼らには、想像もつかないような、びっくりするような困難が次々に巻き起こるかもしれない。それでも、次の時の私は、未来の不安に動じることなく、彼らを心から信じてどんと構えて肉や揚げ物をもぎゅもぎゅ食べ、お酒を飲めるオタクになってるんじゃないかなと思う。


だって超特急なら、絶対大丈夫だから。